『フリー<無料>からお金を生みだす新戦略』 クリス・アンダーソン

ワイアード」誌編集長がかいたこの本は、恵比寿の有隣堂でたまたま見つけた本だ。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

現在、インターネットでは電子メールやTwitterを始めとした多くのサービスが無料(フリー)で提供されている。何かを無料で提供する事により大金を稼いでいる企業が存在している。
著者は、フリーのビジネスモデルは大きく分けて次の4種類があるという。
1.モデル1:直接内部相互補助
これは、1枚買えば2枚目はタダといった販売モデルのようなものだ。フリーの商品やサービスによって、消費者の目を引いて別の有償の商品を購入してもらうという方法だ。
2.モデル2:第三者市場
もっとも一般的な方で現れている無償のモデルであり、代表的なものは、テレビを始めとするメディアがこれに相当する。メディアが制作物をただに近い価格で消費者に提供し、そのメディアに参加する為に広告主がお金を払うモデルである。Web広告で多くの収入を上げている企業もこの生態系で利益を上げている。
3.フリーミアム
フリーミアムはFreeとPremiumを合わせた造語だ。基本版を無料で配布し、プレミアム版を有償で販売するというモデル。スカイプなどはこの代表的な例である。
4.非価値市場
製造者は無償で情報やサービスを提供し、消費者から注目、評判あるいは、本人の満足感といった貨幣ではないものを受け取る。この例は、ウィキペディアオープンソースの開発などがある。

「タダより高い物は無い」という諺がある。これは、本当に「タダ」のものは世の中に存在しない。手に入れる為には何かしらの方法で代金や代償を払う事になるということである。しかし、これは「閉じた市場」での話である。現在は多くのものが「分散された市場(おそらく全員ではない誰かが払う。コストは非常に細かく分散されているので、個人は全く気がつかない)」に移りつつある。
特に顕著なのはデジタル世界では、情報、サービスなどが急速にフリーに向かって進んでいる。その中で新しいビジネスモデルが次々に生まれ、新たなビジネスのチャンスも拡大している。

OSSのサポートビジネスも、まさにフリー経済の中での代表的なビジネスモデルなのだと思う。
Linuxは、誰もが無償でソフトウエアを利用できる。そして、有償でサポートするビジネスモデルが存在し、利益を上げている。例えば、RedHatはFedraを無償で提供し、Fedraでの開発成果を自社製品であるRedHat Enterprize Linuxに反映させ、有償のサポートサービスで利益を上げている。

デジタル世界におけるビジネスでは、フリーとどのように付き合っていくかが大きなポイントになると考える。無償版とプレミア版、あるいは他の市場からの収益により無償(に近い)別のサービスを提供するといったことだ。
オープンソースのビジネスに深く関わっている自分にとって、今後の大きなテーマである。

最後に、本書に書いてあった印象的なフレーズを抜粋する。
「フリーと競争するには、潤沢なものを素通りしてその近くで希少な物を見つける事だ。ソフトウエアが無償なら、サポートを売る。電話が無料なら、遠くの労働力と能力をその無料電話を使って届ける。もし自分のスキルがソフトウエアにとってかわられた事でコモディティ化したならば、まだコモディティ化されていない上流に上って行って、人間が直接関わる必要のある、より複雑な問題解決に望めば良い。そうした個別の解決策を必要とする人は、より高い料金を喜んで支払うはずだ。」