イー・モバイル会長 千本倖生氏講演内容から

 たまに見ているグロービスのページで非常によい講演記事を見つけた。イー・モバイル会長・千本倖生氏がグロービスビジネススクール主催のセミナーでの内容のようだ。

原文:http://globis.jp/public/home/index.php?module=front&action=view&object=content&id=799

 この講演内容では、千本氏の今までの経歴を説明し、現在のイー・モバイルをとりまく携帯ブロードバンドの現状について触れている。後半は千本氏の今までの経歴から生み出されるアントレプレナーに対する考えが述べられており、記憶に残しておきたい良い言葉だと感じた。
自分の後学のために言葉を抜粋して残しておく。

 アントレプレナーは、世のため、人のため、という大義を掲げるもの。そして、世界水準で差異化できるものがなければならない、というのが私の考えです。

 これまでの経験を振り返り、真のベンチャーとは?と問われたら、私は「夜間飛行」「登山」「非常事態の対応」「成功へ導く運」という四つのキーワードを挙げます。

「夜間飛行」
 ベンチャー企業の経営というのは漆黒の闇、暴風雨の中を一人、セスナを操縦するのにも似ています。それは(安定した大企業経営の喩えとして)、晴れた昼日中にジェット機のコックピットに座るのとはまるで異なります。
 アントレプレナーとは本質的に孤独なものです。エスタブリッシュからは常に嫌われる。本物のベンチャー企業というのは、彼らが作り上げた古い価値観を破壊し、そこから立ち上がってくるものにほかならないからです。だから恐れる。憎悪する。その憎悪の念に耐え、誹謗に耐え、自らの立てた大義を信じて立ち続ける。その覚悟の持てない人には、軽々しく起業することはとても勧められません。

「登山」
 ベンチャー企業の経営は、「登山」にも似ています。(中略)
 最初から標高3000メートルの先を見据えて登りはじめたら、その長さに途中で心が折れてしまうこともあるでしょう。だから一旦、歩き始めたら、常に目の前70センチメートル先のリスクだけを見て、怠けず、たゆまず、進んでいく。もうダメだ、と思ったときには、あと1歩だけ頑張ってみようと自分を励ます。その繰り返しが、3000メートルの高みまで連れて行ってくれるのです。
 ベンチャー企業の経営というのは、そんなつまらないことです。決して派手なものではありません。でも登り切ることができたら、お仕着せのハイキングコースなどを歩いた人とは比べ物にならないような、より大きな充足感を得ることができるでしょう。そういうものです。(中略)
 ベンチャーというのは、つまらないことを諦めずに繰り返すことの集積です。誰もが諦めようとしたとき、あと0.1パーセントだけ、0.1円だけ、と、粘れるか。それが何兆円というビジネスを創っていく。経営者はそういう思想で社員を染め上げなければいけない。そうして、真っ赤に燃える集団を作れたとき、そのベンチャーは大変に強力なものとなります。

「非常事態の対応」
 ベンチャー企業を経営していたら、ありえない事態など次々と起こります。そうした事態に、どれだけ対応できるかが、経営者の力量の問われる場面なのです。(中略)
 ベンチャー企業には、非常事態が次々と襲いかかります。けれど諦めず、道を探せば、その過程が糧となって、組織はそれまで以上に筋肉質に生まれ変われる。試練をチャンスに変えられるか、ということが成否を分けるのだと思います。

「運]
(前略)では、運はどうすれば得られるか。それは自らの立てた大義に対して、誠実に、謙虚に、懸命に努力しているかということが、何かしら人知を超えたものによって評価されているのだと思います。何事も90数パーセントまでは努力によってコントロール可能だが、残りはアンコントローラブルなものと捉えています。(中略)
 何か一つ、大義を成そうとするときには、よそ見などしている余裕はありません。自分のドメインを守ることで精一杯なはずです。企業経営というのは、選挙に出ようとか、六本木で楽しく遊ぼうだとか、そうした気構えでできるものではないのです。

 今までの豊富な経験にもとづく非常に重みのある言葉である。自分の将来を考える上で、大事に心に置いて心の糧としたい。